展覧会
幻の卵殻手と三川内焼 – 400年の歴史を超えて
日本ギャラリーでは、6月23日(木)から7月20日(水)まで、日本近代外交の入り口となった小さな港町平戸の歴史と三川内焼の作品を紹介する展覧会を開催致します。「Hirado」の名で海を渡り19世紀のヨーロッパ人を魅了した「三川内焼」(みかわちやき)。本展では、時を超え人々を魅了する三川内焼(みかわちやき)の美を伝えます。
江戸時代、現在の長崎県佐世保市に技術の粋を集めたやきものがありました。そこで焼かれたやきものは、藩の名称から「平戸焼」と呼ばれました。現在は「三川内焼」と呼ばれています。1637年、初代平戸藤祥は、御用窯創設者の一人として任命され、藩により手厚く保護がされ、作品は藩の献上品として使われました。製法も門外不出とされました。昭和になると皇室御用達になりました。高貴な人々に愛され、秘蔵されたがために庶民には手の届かない器だった時代がありました。
江戸時代後期から明治時代にかけて、平戸焼の輸出の主力商品となったのが「卵殻手(らんかくで)」と呼ばれる磁器です。卵の殻のように薄いことから欧米ではegg-shell chinaと呼ばれ、世界一薄い焼き物として高い評価を受けました。それらは今でも、欧米各地の美術館や博物館に収蔵され、海外でしばしば目にすることができます。しかし、時代の変化に伴い生産が減少し、やがて卵殻手の技法は誰にも受け継がれることがないまま100年程前に途絶えてしまいました。ところが、13代目にあたる平戸藤祥(藤本岳英)は卵殻手の技術的、美術的な質の高さに着目し、謎に包まれたその材料、成形の方法、焼成技術について長年の研究と試作を経て、2006年、卵殻手の復元に成功します。本展では、「卵殻手」の技法の謎を解いた13代目平戸藤祥の資料を初めて一般公開します。
また、古平戸の逸品と、平戸の窯元、五光窯、光雲窯、嘉泉窯から、400年の伝統を受け継ぐ現代三川内焼の秀作、合わせて66点を展示する予定です。さらには、メトロポリタン美術館やフィラデルフィア博物館等の海外博物館に所蔵される平戸焼の絵手本を含めた冊子を展示いたします。江戸時代、平戸藩の注文にあたって絵師が制作した絵手本は器の形と文様が墨と淡い色彩で描かれ、海を渡った平戸焼のロマンが溢れます。
是非、ご来場を賜り、独自の技法である「透かし彫り」、「置き上げ」、「染付」、「手捻り」など、作品に息づく陶工たちの想いを間近に感じながら、江戸時代の平戸焼から現代の三川内焼に至るまでの伝統の手技を今に受け継ぐ窯元たちの優れた作品をお楽しみ下さい。
平戸焼/三川内焼の特徴
卵殻手:
厚みが1ミリ程の薄い素地のカップは、それが焼き物であることを疑わせるほどの軽さです。また、白磁特有の透明性から、光を当てると、素地が柔らかな白色の電球のように変わります。
染付:
細やかで写実的な絵。三川内焼の染付は、「まるで一枚の絵のような」と評されることがあります。絵画を描くように、一筆一筆を運んでいきます。そのため、やきものの絵付けとしては珍しく、濃みの濃淡で立体感や遠近感を表現するなど、絵画的な図案として描かれています。白磁にコバルトブルーの墨絵のようです。
染付図案唐子:
中国の染付図案として日本にも伝わり、平戸藩(長崎県)の御用窯として、三川内焼がほぼ独占的に唐子を描いてきました。唐子の人数によって等級が異なります。通説では、7人いれば皇族・幕府への献上品、5人ならば大名への贈答品、3人ならば一般品といわれます。
透かし彫り:
軽やかさを演出する透かし彫り。焼成前の磁器の素地が乾く前に、透かしを彫ってゆく。
置き上げ:
彫刻ではなく、ペースト状の磁器を少しずつ盛り上げて紋様を描いている。「パテシュール パテ」(仏セーブル)より以前の技法である。
本展のみどころ
絵手本 メトロポリタン美術館やフィラデルフィア博物館等、海外博物館に所蔵される平戸焼の絵手本も含めた冊子の展示。江戸時代、平戸藩の注文にあたって絵師が制作した絵手本(図案)は器の形と文様が墨と淡い色彩で描かれ、海を渡った平戸焼のロマンが溢れます。
骨董卵殻手 19世紀にその多くが輸出された卵殻手の、現存する作品です。三川内で作られその時代に海外に渡った卵殻手は、欧米の博物館に所蔵されている。
復刻卵殻手 13代平戸藤祥が卵殻手の技術を用いて作成した現代の卵殻手。平戸藩御用窯に伝わる台付盃をアレンジしたものなど、骨董にはない形をろくろで作り上げ、現在の生活スタイルに合う工夫している。
平戸藤祥、取材放送のDVDでは、「NCC 長崎文化放送」「NHK 長崎放送局」が土・資料・研究のいきさつとその製造現場も取材を続けた記録映像の放映。
Sweden国王王妃両陛下に献上された卵殻手珈琲椀皿。染付で唐子絵、その風景はSwedenの海岸線の風景を描いたもの。
皇太子殿下から「絵柄は書かず、窯名を高台内に記すのみ」とのオーダーで制作した卵殻手。
幕末平戸オランダ貿易時代の看板「陶閲館」。1830年、藩主より「陶閲館」の屋号「大日本藤本造」の銘を受ける。
日本で最も古い写真館のひとつ、坂本龍馬を撮影した「上野辰馬写真局」での撮影。(9代目と10代目平戸藤祥の写真)
平戸焼の技法、「透かし彫り」と捻り細工による龍の香炉。
光雲窯製「昔鯨」や「群鯨」など。 先祖は三川内焼の陶祖、今村弥治兵衛。厚生労働省より「現代の名工」として表彰を受ける。白磁の轆轤技術を伝承し、草花や鯨を描く。
嘉泉窯 「唐子絵」や「松竹梅」 平戸藩御用窯の歴史を支えながらも、新しい感覚の作品。
1876年アメリカ建国100年を記念した「フィラデルフィア万博」に向けて製造した作品。高台名に「藤本造」と銘が入ったソーサーが残る。カップを同じ技法で再現した作品。
主催:日本クラブ
協賛:JCC Fund (ニューヨーク日本商工会議所)
後援:国際交流基金ニューヨーク日本文化センター、長崎県、佐世保市、三川内陶磁器工業協同組合
協力:五光窯、光雲窯、嘉泉窯、長崎歴史博物館主任学芸員松下久子、安弥多佳堂、
和art Gallery、TV NCC長崎文化放送、NHK長崎放送局
監修: 13代目平戸藤祥
アートコーディネーター: 林祥子
会期 | June 23 (Thu) – July 20 (Wed), 2016 |
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開催時間 | 10:00 am – 6:00 pm (Monday - Friday) 10:00 am – 5:00 pm (Saturday) |
場所 | The Nippon Gallery at The Nippon Club 145 West 57th Street, 7th Floor, New York, NY 10019 |
入館料 | Free |
詳細 | Tel (212) 581-2223 E-mail info@nipponclub.org URL: www.nipponclub.org |